歯周炎の適切な管理を目的とした矯正治療
2025/02/05
成人矯正では、多くの患者さんが主に審美性の向上を目的として治療を選択します。しかし、矯正治療には歯周組織の再付着の促進、清掃性の向上、咬合機能の改善といった利点があり、歯周炎の管理を目的として行われることもあります。
1. 歯周炎による歯列不正
進行した歯周炎では、以下のような歯列不正が生じることがあります。
歯間空隙(Spacing):64%
出っ歯(Protrusion):56%
前傾切歯(Inclined incisors):32%
このような病的な歯の移動は、患者さんが自身の歯周病に気付くきっかけとなることがあります。
2. 歯周病罹患者における矯正治療のプロトコル
歯周病を有する患者さんに対する矯正治療では、以下のステップを踏むことが重要です。
矯正治療開始前:口腔内のクリーニング、歯周検査、出血や排膿の有無の確認
矯正治療中:定期的なクリーニングの継続
矯正治療後:定期的なクリーニングとメインテナンス
3. 矯正治療による歯周組織へのメリット
実際の自験例
矯正治療を行うことで、歯周組織に以下のような改善が見られることが報告されています。
歯周組織の改善:平均 0.24mm
辺縁骨レベルの改善:平均 0.36mm
乳頭部の回復:平均 1.36mm
これらの改善に加えて、歯並びや咬合の審美性が向上することを考慮すると、矯正治療のメリットは大きいといえます
治療項目 | 目的 | 金額(税込) |
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エアーフロー | 歯周炎の安定化、口腔衛生環境の改善・維持 | ¥33,000 |
ブラケット装置 | 矯正治療 | ¥484,000 |
保定装置 | 矯正治療後の後戻りの防止(リテーナー) | ¥176,000 |
総額(税込) | ¥693,000 |
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♠実際の治療期間等♠
①矯正治療開始前(歯周治療)
来院回数 39回(2020年~2023年)
②矯正治療中(定期的なクリーニングと併用)
来院回数 28回(2023~2024年)
③矯正治療後(保定およびメンテナンス)
保定は約2年を想定、メンテナンスは今後も定期的に実施する
注意事項
◆歯周治療を含むすべての処置は健康保険による療養の給付の対象外です(自費治療/自由診療)。
◆初診料や再診料、処置料、クリーニング施術費は上記の治療費とは別に都度お支払いいただきます。
◆実際の矯正治療は、患者さん個々の事情により異なります。治療効果を約束するものではありません。
4. まとめ
世界には約7億4000万人の歯周炎罹患者がいるとされ、その中には中等度から重度の歯周炎に苦しむ方も多くいます。近年、矯正治療による歯周炎管理の利点が注目されており、適切に矯正治療を行うことで、歯周炎の進行を抑える可能性が示唆されています。 ただし、歯周炎罹患者に対して矯正治療を行う場合、以下の点を考慮する必要があります。
定期的なクリーニングを継続できる意欲があること
抜歯を伴わずに矯正治療が可能であること
□Ⅰ級咬合であること
これらの条件を満たす患者さんに対し、矯正治療を検討することが望ましいでしょう。